Guitar Repair of the Day
GIBSON J-45
ギブソンのJ45。
ギターの調子が悪いな、と感じても具体的にどこが悪くてどうすれば元の状態に戻るのか分からない事も多いと思います。
前と比べてなんとなく鳴りが悪いな?とか、音がビビるな?とか、弦高が高くなって弾きずらいな?とか。
ギターは永久に同じ状態を維持するのは難しく、湿度環境によって木が曲がったり動いたりします。
アコギの場合表面は塗装によってコーティングされているので外気の影響を受けずらいのですが、ボディ内部はサウンドホールが開いている事もあり水分の影響を受けやすいです。
前にもそんな状態で弦高が上がってしまったので別の店にリペアに出したとの事で、今回また状態が悪いので依頼を受けました。
内部を見てみると何やら真っ黒。前のリペア状況を聞いたら「内部を全てシーラー塗料を塗って覆ったようです」との事・・・
かなりの厚さで塗られているラッカーシーラーと思われる塗料。
ギターを適度な状態に保つのに基準となる部屋内の平均湿度を50%とすると、沖縄の平均湿度は約60%~70&%。
沖縄で一般生活をしながら人間とギターが共存する部屋で、湿度を50%以下に保つのはほぼ不可能です。可能ではあるのですが、部屋環境を整えるのに初期投資はかなり高額になり、また年間維持コストも20万円を超えるでしょう。
これは全ての人、家、場所、環境に当てはまるわけでは無いので、あくまで当店に持ち込まれた数百の事例から割り出した平均値です。
有名ギターが作られるアメリカ本土はおろか、日本本土と比べても圧倒的に湿度の高い亜熱帯沖縄にて、アコギをコンディションよく保持するのは、本当に難しいです。
そこで湿度の影響を最小限にするために内部にシーラーを塗る、という選択肢もあるのかと思います。
それでも外気の状態は変わらないわけで、ラッカー塗装などは外からでも水分の影響は受けます。
木部の内部に溜まった水分の逃げ道が無くなれば、木部内部から変形、ひび、割れ、歪みが出る事もあります。
今回のギターの内部をチェックしたところ、ブレーシングと裏板のシーラーを剥がし隙間を見ると、殆どの箇所でブレーシングが浮いていました。
木部内の水分の逃げ場が無くなれば、ブレーシングと板を接着している接着剤が剥がれてくるのでしょう。
浮いて盛り上がってしまった表板をクランプしながら、内部のブレーシング周りの塗装を全て落とし、ブレーシングの浮き部分を再接着しました。
特にボディの外径部分、外側のブレーシングが浮いてしまっているので、横板が引っ張られ、表板に歪みが出るという構図です。
全て再接着しジャッキクランプします。
届かないエリアはこんなクランプで。
同時にナットもかなり低くなっていました。
2弦はかなり削られて広がっています。
新しい牛骨ナットから削り出していきます。
横から光を当てて、何度も何度もフィッティングしながらぴったりはまるように削ります。
弦の溝を掘ってポリッシュして完成。
実は写真を撮り忘れたのですが、裏板センター部の塗装に亀裂が入っていました。
ブレーシングが浮いて裏板を支えきれなくなり歪んでしまったので、徐々に亀裂が入ったのだと思います。
タッチアップ塗装で亀裂の跡は無くなりました。
浮いていた表板もかなりフラットに戻りました。
弦高も12フレット近辺で2.6mmほど。
結構下がりました。
アコギのメンテナンス、修理は是非ご相談下さい。
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