GIBSON L-50
Repair of the Day

GIBSON L-50 – Body Top Crack

年季の入った1940年代のアーチトップ。
ボディトップ 状態

経年でトップに3か所亀裂、割れが出てしまったようです。
右側のFホール上部からカッタウェイ付近までの亀裂。
ここが一番大きな割れでした。

Fホール下部の亀裂

全体的に経年の薄いクラックがあります。
亀裂部 接着

アコギやフルアコ、セミアコなどのホローボディの場合、持ち込まれた状態を把握する様は外科医のようですね(笑)
各部の高さ違いや歪みを計測し骨格調整、手術に取り掛かります。

歪んで広がった部分は時間を掛けて矯正し、亀裂の部分にはボンドを専用のエアーで押し込み、接着したい面へまんべんなく塗りこみます。

接着剤を少しだけ水で溶いて隙間に入りやすい粘度にします。

エアーコンプレッサーに繋いだ専用のエアーガンで、亀裂部分に空気を押し込み、接着剤を割れの隙間に押し込みます。

トップ面は綺麗にふき取ります。

Fホール中ほどの亀裂部分。
こちらも同じように、接着剤をガンで流し込みます。

上から空気を吹き付け、接着剤を押し込みます。

全ての亀裂に接着剤を流し込みました。

パッチ

その後、TOP材と同じスプルースを円形に型抜きし、ペグを流用した冶具にてボディ内部の亀裂部分へパッチしていきます。

くり抜いた木材パッチとストッパー、引き上げるペグ。

ボディトップの割れの隙間に1mmほどの穴を開けて、1mmのピアノ線を通します。
ボディ内部の線をFホールから出して、割れの裏側を補強する為の木材パッチとストッパーを通します。

ボディトップから弦を巻く容量でペグを巻き上げ、木材パッチを割れの裏面に接着剤で貼り付けます。

同様に他の割れ部分にもパッチ接着。

アーチトップのボディなのでパッチも少し変形させます。

Fホールから内部を鏡で見ると、このように補強されているのが分かります。
塗装 タッチアップ

古いギターなので一つ一つの行程を時間を掛けて進めていく事数か月。
接着が固まり問題無い強度になったのを確認し、塗装タッチアップ、研磨、クリーニングを経て完了。

着色後ラッカーを塗布

傷の部分のみタッチアップ塗装しました。

乾燥後、研磨、バフ掛け


裂けめは殆ど分かりませんね。

見た目も気にならない程度にタッチアップできました。
表面は塗装されているので、傷跡の無いフラットな面になっています。
弦を張る時も細いゲージから段々と、1週間位経過を見ながらチューニングも1音位下げてから徐々にレギュラーへ上げていきました。人間と一緒でリハビリ期間も必要ですね。
完了したギターのサウンドは、本当に個性的でブルースやカントリーにピッタリのサウンド。
「枯れている」という言葉がふさわしい、歴史を感じるギターでした。
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