Guitar Repair of the Day
VG KTR ドレッドノートタイプ
お客さんからの質問で多いのが「沖縄でアコギのコンディションを維持するにはどうしたらいいですか?」というもの。
沖縄は南国でいつも晴れている印象だと思いますが、降水量は全国平均より高く雨の多いエリアです。
高温多湿で亜熱帯に属する沖縄では南からの湿った空気が入り込む事が多く、ギターには大敵です。
先ずは温度計、湿度計を買って、一年通してどのような湿度環境かを知って下さい。
本土と圧倒的に違うのは湿度が50%を切ることがありません!!
うちのお店も全ての壁を漆喰にしてエアコンをフルで稼働し除湿器を入れても常に50~60%台です。
よくある環境は、夏場などで帰宅後クーラーを入れて朝まで涼しい状態。
仕事に出る際にクーラーを消してまた夜にクーラー。
このような室内の温度環境は18度から35度をいったりきたりする状況。
夜から朝までクーラー入れてカラカラになった部屋。
午前中に気温が上がり南風が吹いて雨など降ろうものなら、一気に室内に湿気が入ってきます。
そしてまた夜はカラカラに・・・
特に本土から沖縄に越して来た方で、わずか1か月でギターが反りまくったり、ブリッジが剥がれたり、ボディが割れたり。
みなさん共通している生活パターンでした。
このような悪条件の環境で使用される事を考慮してギターは作られていないです。
特に北米で(アメリカやカナダ)作られたギターを沖縄で使おうものなら、それ相応の覚悟と維持費が掛かる事を念頭に入れてください。
最低でも同じ温度、湿度を保てる環境にギターを置く事、またはその努力をする事。
勿論、沖縄でも全く問題無いギターも多々あります。
それでも当店へ修理にて持ち込まれる、年間1500本近いギターを見ると、沖縄(亜熱帯)ならではの維持の仕方が必要なようです。
では、そのような環境でどう維持するべきか?
先ずは現状を知る事です。
沖縄で作られたギターで無い場合がほとんどなので、いつ作られ、いつ日本に入って、いつ沖縄に入って、そこから何年間、どのよな環境で保管してきたのか?
そして現状のギターはどのような状態か?
当店にてメンテナンスされたギターは、全てリペアカルテを作成しております。
持ち込まれた時点での状態、修理後の状態を記入しているので、半年毎、一年毎の再メンテナンスの際に、どれだけ変化があったのか?
適格な診断、メンテナンスで、大きな手術をしなくて良い状態を維持出来ます。
人間の体に近いですね。
きちんと健康診断をしていたり、健康に気を使っている人のギターは、総じて良い状態だったりします。
大切な相棒も、年に一度は健康診断を!!
今回のギターもその診断としては、分かりやすいケース。
弾いてみて、普段よりも弦高が高くなってきたな?と感じたらブリッジ周り、ブリッジ付近のボディトップを見てみて下さい。
写真のようにブリッジが極端に高く見えたり、ボディトップが膨らんでいるのが確認出来る場合、弦高が高くなるのです。
なぜ、ボディ下部が盛り上がってしまうのか?
アコギは弦を張った状態で、数十キロの力が加わります。
ボディもネックもしっかり支えられるコンディションならいいのですが、湿気が多く木が膨張し、湿度が低くなり木が曲がり、これを短時間で繰り返せば、どこかに歪みが出来ます。
写真のように、内部のブレーシング(力木)とバック板の間に隙間が出来てしまい、ギターのボディバランスが崩れてしまう事が多いです。
そうなると数十キロの力に耐えられなくなり、弦に引っ張られてボディトップが盛り上がってきます。
これにも耐えられなくなると、ブリッジに隙間が出来たり剥がれてくることも。
このような状態で、ただサドルを削って弦高を下げただけのギターもよく見ますが、根本解決にはなりません。
浮いたブレーシングは、専用のリフターで上下にテンションを加えながら圧着します。
内側からブレーシングに力を加え、外側のボディトップもクランプして膨らみを抑えます。
今回はナットにビビりもあったので、交換しました。
牛骨オイル漬けナット。
最近は写真のような専用ヤスリ冶具があるので、あっという間にナットの製作が出来ます。
電動サンダーで厚み、高さを整えます。
ナットの底面を完璧に平面にして、削り出したナットも寸分の隙間も内容に納めます。
弦を外した時に取れないように接着剤にて固定しますが、基本的に接着剤が無くても良い位、ピッタリに仕上げています。
コンパウンドで磨いた牛骨は独特な光沢が。
持ち込まれた時より大分弦高が下がり、弦振動も大きくなりました。
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