Repair fo the Day
KAWAI Rockoon 5-String Bass
89年製カワイの5弦ベース。
フレットすり合わせ
幾つかのフレットがすり減っていて音詰まりがするのですり合わせを行いました。
このような定規で、部分的に段差のある部分を見つけていきます。
当店ではフレットのすり合わせをする際は、写真のような台(ネックジグ)に載せてすりあわせを行います。
特にベースの場合は、弦の張力が強いので、弦を張った状態にてフレットをストレートに研磨しないと、研磨後に弦を張ってみて凸凹の誤差が大きくなってしまいます。
ネックジグであれば、弦を張った状態を記録し弦を外して作業出来るので、大幅にストレートの狂いが少なく仕上がります。
上の写真は弦を張ってチューニングを合わせた状態。
この位置を 0 としてメモリを合わせます。
次に弦を外してみると、ブリッジ側に引っ張られていたネックは左下(ヘッド側)に下がります。
写真のように、0に合わせたメモリもずれています。
下がってしまったヘッド側にこのようなジャッキを使い、弦を張っている時と同じように上げていきます。
先ほど弦を張っていた時に合わせた0のメモリ位置になるように調整。
これでフレット上がストレートになりました。
今一度フレット上の高い箇所をチェックし、マーキング。
浮いているフレットは、この時点でクランプにて抑えこみます。
さあ、すり合わせ開始。
このようなストレートのブロックで均一に削っていきます。
途中何度もストレートを確認しながら、最小の削り量で仕上げていきます。
指板のアールに合うように、同じラジアス値のブロックで調整。
全てのフレット上が、真っすぐに揃いました。
フレット上はこの時点では、台形のようなシェイプ。真っ平なので弾いたらビビります。
半円の形状になるように、台形の角ばった部分だけを削ってシェイプします。
くれぐれもトップはこれ以上下げないように!!
全て頭の形を揃えたら、傷を取り、最後にコンパウンドでピカピカにします。
これでフレットは完了。
ナット交換
次にナット部分。
ご覧のようにナットの溝に隙間があり、開放でビビりが目立ちます。
新しいナットへ交換。
ナットは、それぞれのギターやベースのナットサイズに合わせてこの長方形のブロックの状態から削り出していきます。
絶対条件は、フレットの高さに合わせ高さを調整。それと弦の太さに合わせて溝を調整。
一から削って作り出すので、ナットのスロットの大きさに合わせ、ピッタリに収める事が出来ます。
少しきつい位にスロットにフィットしているので、すぐ抜けてしまうナットに比べ、格段に弦振動が多く伝わります。
少しづつ削ってビビりのない、適度な高さになるように調整。
最後に角を取ってコンパウンドで仕上げて完了。
フレットもご覧のようにピッカピカ。
5弦もほとんどビビりはありません。
低音弦の太いベースは年々、ネックに負荷が掛かり曲がっていきます。
単純に全体が順反りになる事は珍しく、ヘッド側を上に見た時、時計回りに捻じれる事が多々あります。
その状態でプレイし続けるとフレットが浮いたり、捻じれの多い部分のフレットが減っていきフレット上のストレートのバランスが崩れている状態を多く見かけます。
最低でも月に一度はネックのストレートの状態を確認し、常に適正なネックの状態を保つ事が大事です。
バランスの取れた状態のまま弾いている楽器と、バランスの崩れた楽器の状態に慣れて使い続けるのとでは、楽器に掛かる負荷が変わるのでリペアも大変になります。
セットアップだけであれば店頭にて調整可能です。
何か以前と調子が違うな?と思ったらお問い合わせ下さい。
ベース、等の修理は お気軽にご相談下さい。
お願いいたします。