Guitar Repair of the Day
Martin D-1 – Clamps for Body top
ボディトップ膨らみ
マーティンのD-1。
コストパフォーマンスモデルながらマーティンらしい艶のあるサウンドが特徴。
沖縄でのギターの保管
沖縄でリペアをしていて何百本のマーティンを見てきましたが、コンディションや状態は値段と関係なく、ある一定の条件を超える(下回ると)途端に変形・捻じれ・剥がれが起きるようです。
保管環境、湿度差、には特に気を付けなければならない沖縄の環境。
湿度が多いのでケースに乾燥剤を沢山詰めてしまっているのが一番最悪。
乾燥剤は思っているほどギターにとって適度な乾燥状態にはならず、むしろカラカラすぎる環境を作ってしまうケースが多いです。
ケースの外は湿度の多い環境、中はカラカラな環境。
これらの湿度差を繰り返すと、歪んだり、捻じれたり、剥がれたりします。
本土から持ってきて、3日で曲がったギターも数多く。
某楽器屋さんで購入して3日後にリペアに持ち込まれた方の新品ギターは、ボディトップが異常に膨らんでいました。このケースは年間数十本あります。
購入してから膨らんだのか? 既に膨らんでいるギターを売っているのか?
購入の際に店頭で確認するポイントは、
・弦高は高くないか?
・高いと感じた場合、ネックは反っていないか?
・ブリッジ付近のボディが膨らんでいないか?
(触ってみて膨らみや違和感を感じられる場合は、既に変形している事も)
・ボディ裏を指で軽く叩いてみて、スネアの打いた時のような音が聞こえないか?
新品で検品済みのギターはここまでの状態になっている事はないのですが、
もし上記のような状態であれば、購入しないほうが良いかもしれません。
沖縄のギター販売店で新品のギターを購入し、上記のような症状で当店に持ち込まれるケースの殆どは、似た傾向があります。(長期保管品だったり、代理店から仕入れ後沖縄の気候・環境変化を考慮していない店舗、など)
ボディトップの膨らみとは?
今回のマーティン D-1。
ストレートの定規をボディ下部に置いてみて、ブリッジ付近が高く、バインディング近辺(端)に隙間がある場合は、トップが変形しています。
今回のD-1はそんなにトップは膨らんでいないのですが
弦高がなんと、5.5mm!!
これは弾きづらいですね。
ネックの状態
写真のような特殊な定規があります。
フレットの部分のみ繰りぬかれており、指板上だけの水平を見る事が出来ます。
これでネックがストレートか?順反りか?逆反りか?を見分けます。
今回のギターのネックは思った通り逆反りで、特に中央部分にかなり隙間があります。
トラスロッド調整
ネックにテンションを掛けて、弾く状態を同じコンディションにします。
少し回して、直ぐに効けばいいのでが、中々効かないケース。
こんな時は長期戦です。
一度に一気に回さずに、何度か時間を置いて少しずつ調整。
トラスロッドに余裕が余りないので、この状態で調整します。
ボディトップ膨らみ矯正
これで弦高はだいぶ変わるはず。
ナットとサドルも調整したので、そんなに高さを感じないです。
弦を張り替えてサウンドチェック。
D-1は他のマーティンと比べて塗装が薄い為、艶感は無いのですが抜けの良いサウンド。
くれぐれも、湿度差のないように。
乾燥しすぎも厳禁です。
乾燥剤を大量に入れてケースに放置などは、絶対にやめましょう。