Guitar Repair of the Day
Martin 000-28EC
マーチンのエリッククラプトンモデル。
ブリッジが浮いてきたんですけど?との相談。
店頭で状態を確認してみると、ブリッジの浮き、ボディトップの膨らみ、ボディのくびれ部分のバインディングの剥がれ、サイド板20cmほどの亀裂(割れ)、内部のブレイシングの剥がれ、がありました。
サイドも段差が出るくらい歪んで亀裂が入っておりました。
一口にブリッジの浮き といっても、接着が剥がれただけで再接着にて対応可能なもの、一度はがしてブリッジ設置面の歪みを修正しなければならないもの、ボディトップ下部の膨らみを抑える矯正が必要なもの、などなど。
今回のように内部のブレイシングが剥がれ、サイドにクラックがある場合、ボディバランスを失った歪みが、弦を引っ張るブリッジ部にくる事は多々あります。
ブリッジに隙間が見えたり、浮いてきた時は、直ぐに弦を緩め(外し)リペアに持って行くのがベストです。
先ずはブリッジから取り外しましょう。
ヒーターで熱を加え、スクレーパーでゆっくり剥がしていきます。
ここは絶対に焦らず、1時間位かけてゆっくり ゆっくり 剥がします。
綺麗に剥がす事が出来ました。
接着の跡を見ると、接着の仕方が悪かったり接着剤のむらで剥がれたのではなく、歪み、不均等な力が加わって浮いてきたのでしょう。
続いてサイド部のクラック補修
断面を整え、ピンバイスで穴を開けます。
内部にスプルース材にてパッチを張り付けるので、そのパッチ材を通す為の穴です。
接着剤を亀裂部分に塗り
専用の工具で割れ目の外側から内側に向かってエアーを吹き付け、接着剤を隙間に流し込みます。
吸盤部が真空状態になるので、空気と一緒に接着剤が中まで入っていきます。
内側から見ると、接着剤が溢れでているのが分かります。
膨らんだボディトップ部を抑えるようにクランプし
ワイヤーを穴に通し、パッチ板を準備します。
ワイヤーを巻き上げるのは、こんな原始的な冶具です(笑)
足りなくなってきたので即席で作りました。
ワイヤーといっていますが、実は 1弦!!
ペグで巻き上げ、パッチを固定。
中を見るとこのように固定されています。
クラックの入ったサイド板のすぐ下のブレイシング浮き。
こちらにも接着剤を流し込み、クランプで固定。
もう2か所、パッチを張って固定します。
トップの歪みが治まるまで この状態で10日ほど固定。
亀裂部分は綺麗に接着出来ました。
穴は後ほど、塗装で埋めていきます。
トップ板 ブリッジ部、完全にフラットな状態に戻りました。
ようやくブリッジの接着に入れます。
ブリッジ底面、ボディ接着面を綺麗に研磨。
接着剤をつけて
エンドピンの穴位置を合わせ
専用のバイスで固定していきます。
その後、サイドのクラック部の補修へ。
ラッカーを5~6回に分けて、薄く盛っていきます。
何度か塗って厚くなってきたので、乾燥を待ってから研磨します。
サイドのバインディングの剥がれも修正しました。
ブリッジも綺麗にフラットに接着。
当然と言えば当然ですが、ブリッジが浮き、サイドにヒビがあり、中のブレイシングが浮いた状態のサウンドと、修理後のサウンドとでは、雲泥の差がありますね。
このような大がかりのリペアの場合、込み具合にもよりますが、2カ月~3か月となっています。
料金は事例により変わりますのでお問い合わせ下さい。